火曜日, 5月 01, 2007

インダクタンスの問題の補足ですが…、重要事項あり。

ここの補足です。
こちらの続き的になっていますので、こちらも重要です。

ギャップのある鉄心にコイルが巻かれている場合、という問題。
具体的に数値を代入していく問題で、
全問(問1)を理解していれば問題なし。

まずは鉄心の磁束密度を求める、ために磁束を求める。
磁気回路において、磁束はギャップ部を含め等しい。
(電気における電流と同じ考えなので、直流回路で電流はどこでも同じ)

磁束を求めるには問1で求めた磁束の式、
Φ=Vm/(ω×N)×sin(ωt-90°)
という関係を使う。ここで、Vmは電圧最大値で、問題では実効値が与えられているので、
結局磁束の最大値Φmは、

Φm=√2V/(ωN)

となる。

磁束密度はこれを鉄心断面積で除算すればよい。
さらに、問題では鉄心の特性として表が与えられ、
磁束密度と磁界強度の関係は表から求められる。

ここで、磁束密度と磁界強度がわかれば、双方の関係、
B=μHより、鉄心の透磁率μが求められる。

鉄心の透磁率が求まれば、鉄心部分の磁気抵抗は、
R0=L/(μS)
で求められ、
空隙部分の磁気抵抗は、
R1=L/(μ0×S)
で求められる。

上記の通り、電気回路に置き換えると抵抗の直列接続と同義であり、
合計の磁気抵抗はRは、
R=R1+R0
で求められる。

ここから、インダクタンスLは、L=N^2/Rの式より求められ、
磁化電流IはインダクタンスLよりインピーダンスはωLになるので、

I=V/ωL

で、求められる。

これらに数値を代入していくと解くことができる、という問題。
ポイントです。
実際に数値を代入して値がどうなるか、は手書きを見ていただくとして、
透磁率は空気(真空→ギャップ部)と鉄心部で100倍とか1000倍のレベルで差があります。

通常、鉄心の長さに対してギャップ部は非常に小さい、としますが、
それでもギャップの有無で磁気抵抗には10倍程度の差がでます。
(この問題の場合)

具体的には、
ギャップあり:
R=l/S ×(1/μ+1/μ0)で、
問題ではl=50×10^-2、μ≒5.95×10^-3、S=10×10^-4
が与えられており、ここから計算すると、
R≒8.8×10^5
となる。

ギャップなし:
R’=l/μSで、上記の値を代入すると、
R’≒8.4×10^4
となり、Rの約1/10になる事がわかる。

当然、インダクタンスLは、L=N^2/Rの関係があり、
Lの値は10倍程度となるため、インピーダンスが1/10、
磁化電流も1/10程度となる。

この事が変圧器の励磁電流が無視できる事、
誘導電動機の力率が悪い事の説明に繋がる、らしい。

実際の鉄心の場合、磁化電流の値によって透磁率は変化するので、次のように定義される。
・初透磁率:原点近傍の可逆磁化範囲の透磁率(dB/dH)
・微分透磁率:磁化曲線各部の透磁率(dB/dH)
・透磁率:磁化曲線の各点と原点を結んだ直線から求めた透磁率。
その最大を最大透磁率という。

インダクタンスは、本来非線形である透磁率を線形である、として決められている。
これを踏まえて、環状ソレノイドに関して考えると…、
コイルにN回巻かれた、半径a、断面積S、透磁率μの環状ソレノイドがある。
このソレノイドに電流iを流したとき…、
1)鉄心内の磁界強度は、アンペアの周回積分の法則より2πaH=Ni、よって
H=Ni/(2πa)

2)鉄心の磁束密度は
B=μH=μNi/(2πa)

3)鉄心内の磁束は断面積がSなので、
Φ=BS=μNiS/(2πa)

4)コイルの磁束鎖交数は、
Φ=NΦより、
Φ=μN^2iS/(2πa)

5)よって、自己インダクタンスは、
L=Φ/i=μN^2S/(2πa)
となる。

最後にまたコメントを。
『この問題は理論で学ぶ典型的な磁気回路とインダクタンスの問題であるが、
磁化曲線のことは「μ=一定」であっさり表現され、
回路に流した電流の事は特に考えなくても解けるので、
鉄心に磁束を通す為の電流(=磁化電流)はあたかも正弦波交流であるかのように思い込む。
印加電圧の事は触れられていない。
同じことは、変圧器で学ぶと励磁電流はひずむ、という。
これらの科目間における不連続点を連続にするために今回の問題とした。
 また、鉄心に磁束を通す事について、既往問題のように「まず、電流ありき」
で考えるのか、今回のように「まず、電圧ありき」なのかの違いも感じていただけたと思う。
今回のように、「まず、電圧ありき」で考えると、印加電圧、
磁束および磁化電流の関係が明確になり、例ば変圧器Δ結線内の励磁電流の影響について、
より深い理解へと繋がる。』

との事です。
大事な事は、電圧があって、電流が流れるよ、って感じなのでしょうか…?
どっちにしろ、互いにきってもきれないのだから、どっちから考えてもいいような気もしますが。

以上!