土曜日, 7月 21, 2007

法規、供給力とか、予備力とか、瞬時電圧低下とか(補足)

ここの補足、です。

【供給力と予備力】
問1 供給力
【解説】
供給力に関する問である。供給力は以下の三つ、
(a)ピーク供給力
(b)中間(ミドル)供給力
(c)ベース供給力
に大別される。

ピーク供給力は、急速な出力変化や頻繁な始動・停止ができる必要がある。このため、建設費は安い一方、運転費は多少高くとも低利用率において高い経済性が求められる。これに対応する発電方式として、揚水式、貯水池式、調整池式の水力発電やガスタービン発電などがある。

中間供給力は、毎日始動・停止(DSS:Daily Start and Stop operation)するため、始動・停止が容易で時間が短いこと、負荷変動に対する追従性が良く、部分出力運転でも効率低下が少ないなどが要求される。これに対応する発電方式として、変圧運転方式などの火力発電などがある。

ベース供給力は、長時間の継続運転を行うため、建設費は高くとも運転費が安い事が要求され、これに対応する発電方式として、原子力発電、大容量火力発電などがある。

問2 供給予備力
【解説】
供給予備力は「計画外停止、渇水、需要の変動などの予測し得ない異常事態の発生があっても、安定した供給を行うのを目途として、あらかじめ想定需要以上に保有する供給力」と定義されている。

供給予備力には、「待機(コールド)予備力」、「運転(ホット)予備力」および「瞬時予備力」とに区分することができる。

(1)待機(コールド)予備力
起動から全負荷を取るまでに数時間程度を要する供給力で、具体的な設備としては停止待機中の火力で、起動後は長期間継続して発電する事が可能なもの。

対象要因としては、需要の想定値に対する持続的増加、渇水、停止までに相当の時間的余裕のある電源又は電源送電系統の不具合など、相当の時間的余裕をもって予測し得るもの。

(2)運転(ホット)予備力
即時に発電可能なもの、および10分程度以内の短時間で起動して負荷をとり、待機予備力が起動して負荷を取る時間まで継続して発電し得る供給力で、部分負荷運転中の火力発電余力および停止待機中の水力がこれに相当する。

(3)瞬時予備力
瞬時予備力は運転予備力の一部であり、電源脱落時の周波数低下に対して即時に応動を開始し、10秒程度以内で休息に出力を上昇し、少なくとも瞬時予備力以外の運転予備力が発電されるまでの時間、継続して自動発電が可能な供給力である。ガバナフリー運転中の発電機のガバナフリー分余力などがこれに当たる。

瞬時予備力は、大容量電源脱落時の周波数低下限度を1.5Hz程度にとどめるため3%程度の保有が必要であり、その配置は継続的に分散が望ましく、30%程度の並列発電機のガバナフリー運転が必要と言われている。

【瞬時電圧低下】
問1 電力系統における瞬時電圧低下の現象
【解説】
電力系統において、落雷・台風などにより故障が発生した場合、保護継電システムで高速度で故障点を除去する事になるが、故障を除去するまできわめて短時間(例えば、500kV、275kV系統0.07~0.034秒、154kV以下の系統0.1~0.2秒)、電圧が大幅に低下すること。具体的には、1線地絡時の電圧低下は、154kV以下の系統に主として採用している高抵抗接地系では小幅であり、187kV以上の系統で採用している直接地系統では大幅となる。また、2線地絡および3線地絡時の電圧低下は1線地絡時に比べてさらに大幅となる。

問2 瞬時電圧低下が発生した場合の対策
【解説】
事務機器や生産設備の中には、電圧の変動に対して敏感な機器があり、瞬間的な電圧低下や停電において機能を停止する可能性がある。さらに、これらの設備は、生産設備の制御する装置である場合が多く、瞬時電圧低下により生産ラインの停止や生産活動に支障をきたし被害につながる。

1.瞬時電圧低下による機器の動作影響

 1.コンピュータ(CVCF(Constant Voltage Constant Frequency)、UPS(Uniterruptible Power System)などがない場合)
10~20%の電圧低下が0.003~0.02秒継続するとコンピュータが停止する。

 2.マグネットスイッチを使用している電動機
50%以上の電圧低下が0.005~0.02秒継続するとマグネットスイッチが動作し、電動機が停止する。

 3.サイリスタなどを使用している可変速電動機
20%以上の電圧低下が0.005~0.03秒継続すると電動機が停止する。

 4.高圧水銀灯
20~30%以上の電圧低下が0.005~0.03秒以上継続すると消灯する。

2.瞬時電圧低下に対する対策
(1)電力系統側での対応
電力系統に事故がなければ、瞬時電圧低下も瞬時停電も生じないわけであるが、送電線などの電力設備は自然界にさらされているため、雷害・風雨による事故は避け得ないものである。その中で発生頻度の多い雷外による事故の影響を最小限にとどめるため、事故除去時間(遮断時間)(約0.07秒)により、事故設備を電力系統から切り離すようにしている。しかし、負荷設備には、前述したように0.003秒程度の瞬時電圧低下でも影響を受ける機器があることから、瞬時電圧低下・瞬時停電を電力系統側で完全に対策することは不可能であるが、電力系統側での対策として、以下のものがある。

1.送電線の地中化により、雷など災害を防止する。
2.電源の分散配置により、需要家から見たインピーダンスを小さくし、電圧低下を小さくする。
3.系統分割し、事故影響を極限化する。
4.高抵抗接地系を採用することにより、1線地絡事故時の線間電圧低下を小さくする。

(2)負荷設備側での対応

(a)コンピュータ
バッテリー付きCVCF(無停電形定電圧定周波電源装置)などの設置

(b)マグネットスイッチを使用している電動機
遅延釈放方式、タイマ挿入方式、コンデンサ逆励磁利用方式などのマグネットスイッチを使用し、マグネットスイッチの動作を遅らせる。

(c)高圧水銀灯
ランプ消灯時に高圧パルスを発生させてランプを点灯する瞬間再点灯型水銀灯などの採用。

以上、です。