土曜日, 8月 04, 2007

法規、電気施設管理の2問の補足。

ここの補足、です。

問1 電気事業者の電力系統における電圧調整

【解説】
電力系統において、電圧を維持するためには変圧器などのタップを切り替える方法のほか、無効電力の調整が行われている。無効電力により電圧の調整が行われる理由は、受電単電圧の変化は有効電力の変化より無効電力の変化の方がより大きな影響を与えるからである。

無効電力の調整を行う設備には、同期発電機および同期調相機、電力用コンデンサ、分路リアクトル、静止型無効電力補償装置(SVC)がある。

1.同期調相機(手書き図1):無負荷で運転される同期電動機を同期調相機と呼び、界磁電流を変化させることにより無効電力を遅相から進相まで連続的に変化できる。同期調相機は、無負荷で運転されることから入力エネルギーがなく、系統への有効電力の供給は当然なく、無効電力の供給または消費だけとなる。

電力系統が重負荷の場合、界磁電流を増加させて系統から進み電流をとって容量性負荷として動作させると電圧降下を抑制することができる。逆に軽負荷の場合、界磁電流を減少させると系統から遅れ電流をとって誘導性負荷として動作させると電圧上昇を抑制することができる。欠点としては、回転機であるため、保守に手間を要し、高価である。

2.電力用コンデンサ:負荷として見ると進み無効電力を消費する(電源として見れば遅れ無効電力を供給)。無効電力の調整は段階的で連続的調整は出来ないが、比較的安価で、電力損失が少なく、保守が容易で騒音と伴わない長所がある。


3.分路リアクトル:電力用コンデンサとは逆の機能がある。すなわち分路リアクトルは負荷として見ると遅れ無効電力を消費する(電源として見れば進み無効電力を供給)。電力用コンデンサ同様に調整は段階的である。電力損失が少なく、保守が容易で騒音を伴わない長所がある。深夜など軽負荷時のケーブル系統の充電電流補償や送電端電圧より受電端電圧が高くなるフェランチ効果の抑制に用いられる。

4.静止型無効電力補償装置(SVC:Static Var Compensator)サイリスタ等の半導体素子を用いてインダクタンスやコンデンサの電流を高速に制御して無効電力を連続的に供給できる。静止型無効電力補償装置は、アーク炉などの急激な負荷変動による照明やテレビのちらつき(電圧フリッカ)の対策にも用いられる。

問2 中性点接地

【解説】
中性点接地の目的および各種中性点接地方式の特徴に関する出題である。

(1)電力系統における中性点は次の目的で接地される。
1.送電系統において、1線地絡事故が発生すると健全相の電位は上昇するが、これを抑制し、絶縁レベルの低減をはかることにより系統全体としての経済性を向上させる。

2.保護継電器の動作を迅速、かつ確実にし、事故の波及及び拡大防止や設備損傷を局限化する。

3.通信線への電磁誘導障害の低減。

4.アーク地絡、その他の要因で生じる異常電圧の発生防止

(2)中性点接地方式の種類
1.直接接地方式
変圧器の中性点を直接大地に接地する方式で、187kV異常の超高圧送電系統で採用される。この方式は地絡電流が大きいため、地絡検出が容易であり、1線地絡事故が発生すると健全相電位上昇を1.3倍以下(有効接地という)に抑制することができるので、絶縁設計が合理的となる特徴がある。しかし、地絡電流が大きいため機器に及ぼす衝撃も大きく、また通信線に対する電磁誘導障害も大きくなるが、高速度遮断器の採用により故障時間を短縮することで対策できる。

2.抵抗接地方式
1線地絡事故時における中性点電流が数100A程度になるよう、中性点を抵抗(100~1000Ω)を介して接地する方式で、154kV以下の送電系統で採用されている。この方式は地絡電流を抑制できるため、通信線に対する誘導障害を軽減できるが、直接接地方式に比べて事故検出機能は低下する欠点があるため、零相電流と地絡電流を組み合わせて地絡検出を確実にしている。また、1線地絡時健全相の電圧上昇は大きいため、線路や機器などの絶縁レベルの低減はできない。

3.消弧リアクトル接地方式
中性点を送電線の対地静電容量とほぼ共振するリアクトルを介して接地する方式で、雷害の多い66または77kVの送電系統で採用される。この方式は1線地絡事故が発生すると地絡電流はきわめて小さくなり、地絡アークを自然消滅させることができることから停電することなく送電を継続でき、通信線に対する誘導障害も軽減できる特徴がある。

4.非接地方式
変圧器の中性点を接地しない方式で、1線地絡事故が発生した場合の地絡電流は他の接地方式に比べて小さく、通信線に対する誘導障害は小さくなるが、1線地絡事故時に健全相の対地電位は平常時の√3倍となるほか、間欠アークによる異常電圧するおそれがあるため、33kV以下の送電系統でこう長の短い場合や6.6kVの配電系統で採用される。

以上!