金曜日, 10月 12, 2007

二種二次試験機械制御、H15問3,4、補足。

ここの補足、です。
問題文、解答内容については、ここ参照で。


問3
【解説】
(1)電圧形インバータ
電 圧形インバータは、サイリスタまたはトランジスタなどのスイッチング素子を用いて直流をスイッチングして方形波の交流を供給する方式である。電圧形イン バータは、与えられた回路図に示されるように直流がわに大容量のコンデンサが並列に接続されて、その両端の電圧がほぼ一定となっている。また、題意からイ ンバータはPWM制御されるので、交流側の電圧波形は、不等列のパルス幅からなる方形波となる。ちなみにPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御は、スイッチング素子の導通期間を可変する制御方式の事である。

電圧形インバータは、交流側から見たインピーダンスが低く、電圧源として作動する。

電圧形インバータは、スイッチング素子と並列に帰還ダイオードを接続して誘導性負荷の遅れ電流成分を直流側に帰還させる必要がある。

理 解を容易にするため第2図に示す単相電圧形インバータにおいてPWM制御を行わないものとして考える。誘導性負荷に流れる電流は、第3図に示すように電圧 波形より遅れて変化する。これは負荷のインダクタンスと電源との間で無効電力を授受するためである。しかしながらIGBTは、電流方向が一方向であるた め、負荷のインダクタンスに蓄えられた無効電力を電源側に帰還させることができない。このためIGBTと逆並列に設けたダイオードによって負荷のインダク タンスに蓄えられた無効電力を電源側に帰還させている。

(2)電流形インバータ
電流形インバータは、直流側に大容量のリアクトルを接続して、直流電流が一定値になるようにしている。このため電流形インバータから出力される電流波形は、方形波となる。電流形インバータは、交流側から見た回路のインピーダンスが高く電流源として作動する。

IGBTを用いた電流形インバータの回路構成は、第1図に示すとおりであり、電圧形に設けられていた帰還ダイオードがない。

IGBT と直列に接続されるダイオードは、IGBTに加わる逆方向電圧を阻止する役割を担うものである。三相電圧形インバータの場合は、各アームの上下の素子間で 転流が行われるが、直流のプラス側およびマイナス側に接続されているため、電流の連続性が確保できなければならず、それゆえPWM制御を行わない場合、各 スイッチング素子は、第4図に示すように120°期間ずつ、60°の位相差で順番に導通する。電流形インバータは、このような導通動作をするため120° 導通形とも呼ばれる。

本問の場合、インバータがPWM制御されるので、電流形インバータの電流出力波形は、負荷電流によってその幅が変化する不等幅のパルス列を組合わせた方形波となる。

電 流形インバータは、スイッチング素子に流れる電流が一方向なのでスイッチング素子がオフの期間、逆方向の電圧が印加される。一般にスイッチング速度の比較 的速い素子は、逆耐圧が低い。このため逆方向電圧がスイッチング素子に加わるのを素子する目的でスイッチング素子と直列にダイオードを挿入する。

(3)IGBT
IGBT は、Insulated Gate Bipolar Transistor(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)の頭文字をとったものである。IGBTは、主電流の制御用のバイポーラトランジスタと、電 流の制御用のMOSFETとを一体化して形成した半導体素子である。

問4
【解説】
(1)は、ラプラス変換の基本公式を知っていれば容易に解ける問題である。つまり、定数A、指数関数のe^-atをラプラス変換すれば、それぞれA/s、1/(s+a)となる。ちなみに、与えられたインパルス応答g(t)の波形は、第1図に示すようになる。

(2)のフィードバック系における閉ループ伝達関数は、与えられた制御系における前向き伝達関数がG(s)であり、一巡伝達関数がKG(s)であるから、容易に求めることができる。

W(s)=C(s)/U(s)=前向き伝達関数/(1+一巡伝達関数)
 =G(s)/{1+KG(s)}

なお、この導き方を忘れてしまった場合は、次のように丁寧に式を立てて求めていけば良い。この場合、第2図に示すようにG(s)への入力信号E(s)とおく。

E(s)=U(s)-KC(s)
C(s)=E(s)G(s)

これらより、

C(s)={U(s)-KC(s)}G(s)
 =U(s)G(s)-KC(s)G(s)
C(s){1+KG(s)}=U(s)G(s)
W(s)=C(s)/U(s)
 =G(s)/{1+KG(s)}

【別解】
(3)の安定限界におけるKの値およびそのときの持続振動の角周波数ωは、次のように求めてもよい。

W(s)の式で示される制御系の特性方程式は、式の分母を0とおいた式である。

s^3+3s^2+2s+K=0

この特性方程式からラウス数列を作ると、次のようになる。
s^3|   1     2
s^2|   3     K
s^1|(6-K)/3
s^0|   K

ラウスの安定判別法によれば、制御系が安定であるためには特性方程式のsの全ての係数が正であり、かつ、ラウスの数列の1列目の係数がすべて正であればよい。したがって、制御系が安定であるKの範囲は、(6-K)/3>0およびK>0を満たせば良い。

よって、Kの範囲は、

(6-K)/3>0
6-K>0
∴6>K>0
となる。したがって安定限界となるKの値はK=6である。

次に、特性方程式のsをjωと置き換えて時間領域に変換すれば次式を得る。
-jω^3-3ω^2+jω+K=0
-3ω^2+K+jω(2-ω^2)=0

この式から、-3ω^2+K=0、jω(2-ω^2)=0を得る。これらの式を解けば、

K=3ω^2
2-ω^2=0
∴ω=√2(rad/s)  (∵ω>0)

したがって、安定限界となるゲインKは、求めたωを代入すれば、

K=3ω^2=6

【指導】
単位インパルス関数は、幅a、高さ1/aで面積が1となる波形であり、a→0とした極限波形をいう。この単位インパルス関数δ(t)は、単位ステップ関数をu(t)は、とすれば、次式で定義できる。

δ(t)=lim[1/a{u(t)-u(t-a)}]
(limの範囲はa→0)

単位インパルス関数を定義に従ってラプラス変換すると次式に示すようになる。

L[δ(t)]=lim∫δ(t)e^-stdt
(lim:a→0 ∫:0~∞)
 =lim1/ε・∫{u(t)-u(t-a)}e^-stdt
 =lim(1-e^-as)/as=lim(se^-as)/s=1

単位インパルス関数は、デルタ関数とも呼ばれて、数学的には幅が0で高さ(大きさ)が∞の関数である。

δ(t)=0(t≠0)
δ(t)=∞(t=0)

以上です。