月曜日, 11月 12, 2007

二種二次試験機械制御、H9問3,4、補足。

ここの補足、です。
問題文、解答内容については、ここ参照で。

問3
【解説】
設問の要点は、三相ブリッジ他励式変換装置では、整流器(順変換)でもインバータ(逆変換)でも遅れ無効電力を必要とするが、自励式整流器・インバータでは無効電力を低減できる理由はどうか、ということである。

答の要点は、他励式では交流電源によって転流が行なわれ遅れ制御角でなければ働かないので、遅れ無効電力を必要とする。一方、自励式ではPWM制御により、交流側電流位相を任意にしうるので、無効電力を低減できる、ということである。

(1)他励式整流器の位相制御
他励式整流器で直流出力を制御するには、制御角による位相制御によらなければならない。制御角は負にはできないので、交流側電流は必ず遅れ電流になる。

直流出力を計算する場合、よく用いられる手法で、第1図の電源中性点に対する直流出力+端子電圧DC+の直流電圧平均値を求め、それを2倍する。第3図はその図である。

図で、最上段の時間軸は制御角であり、その他の時間軸はθ=ωtである。

θ=t=α+π/6時に、サイリスタV(第1図)にゲート信号を与えると、Vはターンオンし、転流してDC+からになる。その時点から2π/3の間Vはオン状態でが流れる。これが、第2図の電流波形である。

第3図の太実線のDC+の平均値の2倍が、周知の下記の無負荷直流出力電圧の平均値である。

d0=1.350Vac・cosα

さて、第3図のt(θ=α+π/6)以前ではVがオンし、DC+であるが、tでVへゲート信号を与えるとVがオンしようとする。このとき、第1図によると、ac(tでは+)がVの順方向、Vの逆方向に加わるので、転流の重なり期間を経て、Vがターンオンし、Vがターンオフする。第3図でθ=π/6以前にVにゲート信号を与えてもcはマイナスで、Vには逆電圧は加わらずオフできないからVからVへの転流はできない(他励式の宿命)。したがって、ある制御角で位相制御するときは、第3図の基本波電流の位相がの位相より必ず遅れ、必ず遅れ無効電力を生じるのである。これが解答の式で表されているのである。

α=0ならば、交流側基本波電流は電圧と同位相で無効電力を生じない。したがって、遅れ無効電力を生じるのは、他励式整流器で位相制御をするのが原因だといえる。

(2)他励式インバータの無効電力
上式(Vd0)でα>π/2のときはVd0はマイナスになる。これは第3図によると、DC+)が一点鎖線のように変化し、その平均値がマイナスになることでも確かめられる。整流器の場合は、第1図のiと逆方向には電流は流れえないので、α>π/2では運転できない。

しかし、他励式インバータで直流電源からの電流が平滑化されている場合は第4図のように表すことができ、DC+がマイナス__第4図のDC’が+__であっても電流を流すことができる。図のDC’が+の値であって、iの方向に直流が流れれば、電力の流れる方向はずの←の方向であって、直流電源から交流電源の方向に電力が流れることになる。これが単純に表したインバータである。

第3図で、α=π/2のときはDC+の平均値は0であり、π/2<α<πのときはDC+の平均値がマイナスであることが確かめられる。したがって、解答のように、順変換領域が0≦α<π/2であり、逆変換領域がπ/2<α<πであることになっている。そして、第3図のとの波形(位相)からいって、π/2<α<πでVからVに転流できることも知られる。

いま、たとえばα=2π/3=120°とした場合を第3図で考えると、基本波電流は120°遅れ、有効電流はマイナス(つまり有効電力が交流側に向う)であり、無効電流は遅れであって、交流電源から遅れ無効電力が送られることになる。

すなわち、他励変換装置では逆変換(インバータ)でも交流電源からの無効電力が必要になる。

(3)自励式変換装置の無効電力
以 上述べたように、他励式変換装置では、交流電源の各相電圧の働きによって転流が可能になるのであるが、GTO、パワートランジスタ、IGBTなどのような 自己消弧素子を用いた自励式変換装置では、一般のスイッチや遮断器と同様に、いわば任意の位相でオン・オフでき、交流電源電圧の位相にとらわれない変換が 可能である。

したがって、自励式変換装置ではPWM(パルス幅変調)方式で出力の制御ができる(このほかパルス制御方式という方式もある)。

自励式変換装置では、自励式インバータがよく用いられている。

三相電圧形インバータは、第4図の電流源を直流電圧源に換え、VなどのサイリスタをGTOなど自己消弧素子とダイオード(フィードバックダイオード)との並列要素に換えたものである。第4図の交流電源は単なるインピーダンス負荷に換えてもよい。

第5図は三相電圧形PWM方式インバータのパルスである。パルスの上の図のは、第4図の交流側に発生させたい電圧の1相分である。

第4図のV…V(事故消弧素子)をタイミングよくオン・オフさせて、1相分として図のようなパルスを作る。このパルスを平滑したのが’である。同様に’、’を作り、’-’の波形を作ると、線間電圧ab(=’-’)が得られる。

このパルスは、任意の位相とすることができる(交流側が負荷だけならば、任意の周波数にもできる)ので、交流側に電源がある場合に無効電力を自由に調整できることになる。

整流器の場合も同様に考えることができる。

問4
【解説】
本問の入出力特性の式

y(t)=1/T∫y(t)dt=x(t)

は第1図のようなRC直列回路に電圧Rx(t)を加えたときに流れる電流をy(t)としたときに相当するものである。

いま、第1図の回路において、t=0でスイッチSを閉じたときとすると、次式が成立する。

y(t)+1/C∫y(t)dt=Rx(t)

上式の両辺をRで除せば、

y(t)=1/RC∫y(t)dt=x(t)

ここで、RC=Tとおけば、

y(t)=1/T∫y(t)dt=x(t)

となって、本問の式に一致する。

いま、この式に時間関数x(t)=tを代入すると、

y(t)=1/T∫y(t)dt=t

上式の両辺をtで微分すれば、

y(t)/dt+1/Ty(t)=1
∴Tdy(t)/dt=T-y(t)
∴dy(t)/{T-y(t)}=1/T・dt
∴-dy(t)/{T-y(t)}=-1/T・dt

となるから、この式の両辺を積分すれば、

log|T-y(t)|=-t/T+K
(K:積分定数)

∴T-y(t)=±ε^(-t/T+K0)
 =±ε^K0・ε^-t/T
∴T-y(t)=Kε^-t/T
(K:積分定数)
y(t)=T-Kε^-t/T

上式において、t=0でy(0)=0とすれば、

0=T-K
∴K=T

となるので、y(t)は、

y(t)=T(1-ε^-t/T)

となり、ラプラス変換で求めた過渡応答の式に一致する。

以上です。