月曜日, 6月 04, 2007

ひずみ波と三相Δ変圧器の問題の補足。

補足。
ここの補足です。

Δ結線内の第3高調波に関する問題。
(a)変圧器の励磁電流は第3、第5、…高調波を含むひずみ波である。
(b)励磁電流の中の第3高調波は、Δ結線内を循環する。
(c)Δ結線において、励磁電流について言えば、
(線電流)=√3×(相電流)とはならない。
(d)ひずみ波電流の実効値:I=√(I0^2+I1^2+I2^2…)

変圧器の印加電圧が正弦波であれば、
これに対抗する逆起電力も正弦波でなくてはならない。
このような逆起電力を誘導する鉄心中の磁束もまた、正弦波でなくてはならない。
そして、正弦波の交番磁束を作る為の励磁電流(そのほとんどは磁化電流)は、
鉄心の磁気飽和特性のため第3、第5… の高調波を含むひずみ波である。(a)

典型的な基本波と第3高調波電流の関係は添付図のようになり、
変圧器Aの励磁電流ipAは、

ipA=ipA1+ipA3=√2I1 sinθ-√2I3 sin3θ

と表現できる。
ipB、ipCついては、位相を以下のようになります。

ipB=√2I1 sin(θ-2π/3)-√2I3 sin3θ
ipC=√2I1 sin(θ+2π/3)-√2I3 sin3θ

よって、各変圧器の第3高調波成分は各相同窓となり、
Δ回路の循環電流となる。(b)
また、線電流には…、例ば、Ilaは、

Ila=ipA-ipCを計算すると、
√6I sin(θ-π/6)
となり、第3高調波電流は含まれない。

したがって、Δ結線変圧器の相電流Ipの波形と、
線電流Ilの波形は異なり、それらの実効値IpおよびIlの関係は、
Ip=Il/√3とはならない。(c)すなわち、
メイン参照)

補足の補足1
この問題は、Δ-Y結線であったが、これが中性点が接地されていない、
Y-Y結線ならばどうなるのであろうか。
各相の励磁電流に含まれる第3高調波成分のI3A、I3B、I3Cを考察する。
中性点に対してキルヒホッフの電流則を適用すると、
I3A+I3B+I3C=0
となる。各相同相のI3A、I3B、I3Cが中性点(N点)に流入し、
N点から流出しない事を表している。
これは、I3A、I3B、I3Cが流れない事を意味する。
よって、変圧器は基本波(正弦波電流)で励磁されるので、
変圧器鉄心内の磁束はひずみ、2次相電圧はひずむ。
2次相電圧は正弦波とはならない。
また、各相2次相電圧の第3高調波成分は同相なので、
線間電圧はひずまず、正弦波電圧となる。
N点が接地されているとすると、点a~cの対地電圧は、
基本波成分だけの三相平衡正弦波交流電圧とならなければならないので、
変圧器1次側の中性点Nの対地電圧が高調波振動している事になる。

次に中性点接地されたY-Y結線の場合、同様にN点には、
I3A+I3B+I3C=I0
となる。鉄心に巻かれたコイルに第3高調波が流れるので、
鉄心内の磁束は正弦波となり、2次相電圧も正弦波となる。
しかし、Y結線では相電流と線電流は等しいので、
送電線中に第3高調波電流(各相同相)が流れ、
これが近傍の通信線に誘導障害を引き起こす。

これらが、Y-Y結線が用いられない理由であり、
Y-Y-Δ結線が採用されている。

補足の補足2
電力用コンデンサCの付帯設備である、
直列リアクトルLの容量について考える。

電力用コンデンサの等価回路は、
リアクトルnXT、nXS、コンデンサnXC/nの直列と表現できる。
基本波に対する直列リアクトルおよび電力用コンデンサのインピーダンスを、
XS,XCとすると、n次高調波に対する合成インピーダンスは、nXS-XC/nとなる。
電力系統において、変圧器はΔ結線を含むので、
系統には第3高調波成分はほとんどなく、高調波成分として、
第5高調波成分以上を考慮すればよい。
3種で直列リアクトルは第5高調波と共振するように選ぶ、
と学んだ理由がこれである。
XSをn=5としたときの合成インピーダンスが0となる
(XS=XC/5^2=0.04XC)ように選ぶと、
変圧器低圧側の第5高調波は0となる。

また、このようにXSを選ぶと、7次以上の高調波に対しては、
nXS-XC/n>0(誘導性)となり、変圧器リアクタンスnXTとの
直列共振を起こすことがない。
XS=0.04XCは直列リアクトルの容量がコンデンサ容量の4%となる事を示すが、
実際は周波数低下時などの余裕を見て6%を採用する事が多い。

以上!長文失礼…。