火曜日, 6月 05, 2007

ひずみ波の問題の補足(その2)

ここの補足です。
サイリスタによる整流波形で、方形波を作った場合の解析。

着眼点は以下。

(a)整流回路の交流側電流はひずみ波となり、無数の高調波成分が含まれる。
(b)ひずみ波電流の実効値:I=√(I0^2+I1^2+I2^2+…)
(c)ひずみ波電流のひずみ率μは、
「基本波を除いた高調波だけの実効値と基本波の実効値との比」
で定義される。
μ=√(I2^2+I3^2+I4^2+…)/I1
(d)電源から整流回路を見た総合力率pfは、
pf=P/S=1/√(1+μ^2)cos Φ1
のように、交流電源が高調波を含むときは総合力率pfは、
常に基本波力率cos Φ1より小さい(pf<cos Φ1


補足、その1。

まず、問題文に「L=∞のインダクタンスと、
抵抗Rが直列接続された回路(補足参照)において、
v=√2V sin θ、制御角α=30°(重なり角を無視)、
とすると、交流電流は電圧波形からαだけずれた方形波となる。」
とあるが、L=∞で交流電流iは方形波となる。
この説明はパワーエレクトロニクス分野に任せ(るらしい)、
詳しくは別途書籍等を参照してくれ、との事です。
さらにコメントとして、
「次のフーリエ級数展開もそうだが、電気では『こんな物か』
と認めることが次への理解へ繋がる事がよくある。
今回はとりあえずこれらの事を認めてもらうことにする」
らしいです。半分賛成、半分反対だなぁ。
きっちり理解した方が、応用聞くと思うんだけど、
後は試験本番にしろ、試験勉強にしろ、解くスピードや、
勉強に裂ける時間は人それぞれ。
そのバランスは各人で見極めるしかないよね、と思います。

さて、話は脱線しましたが…、脱線ついでに。
コイルのインダクタンスが∞という事はどういう事でしょうか。
コイルのインピーダンスは、周波数に比例。
つまり、直流に対しては0。で、インダクタンスが∞という事は、
周波数が極低い交流に対しても、インピーダンスは∞。
と、言う事で、交流電圧の内、直流分(一定値分)だけを流す、
というようなイメージになるかと思います。
(実際にそれが方形波になるよ、ってのを数学的に説明するのは、
ここではさすがに割愛)

この問題の解答はほぼ問題文ままで、途中計算が多少入るくらい。
そんなに複雑な計算はないですし、今日はここには触れません。
(最近補足側長いし)

補足その2。
総合力率pf=0.780の力率改善をしたいが、総合力率pf=1、
となるだろうか。
(2)式(メイン参照)よりμ≠0(高調波が含まれる)のときは、
基本波力率cos Φ1=1の場合であっても、総合力率pf=1、
とはならない。

いま、電源と並列に力率改善コンデンサCを挿入し、
基本波力率cos Φ1=1とした。
このとき、

pf=1/√(1+μ^2)=0.90

となる(pf<1)。この総合力率pf=0.90は進みなのか遅れなのか、
という疑問が湧く。この場合は、基本波力率cos Φ1が1なので、
進みでも遅れでもなく、同相と考える。
さらに、総合力率pfを改善するには、電流iの高調波成分を軽減する
(μを0に近づける)以外に方法はない。

同相なのに力率1じゃない、って、不思議な感じですが、
皮相電力と有効電力の比、って意味ではありえるのかなぁ…。
ひずみ波って、不思議だ…。

以上。