火曜日, 7月 03, 2007

法規から、3問(補足)

ここの補足です。

問1 中性点抵抗接地方式
【解説】
電力系統の中性点接地の目的は、

1.1線地絡事故他による異常電圧発生の防止、電線路の対地電圧上昇の抑制、
各機器の絶縁を軽減すること

2.地絡事故時における保護継電器の確実動作

3.消弧リアクトル接地方式では、1線地絡事故時のアーク電流の消弧

・中性点接地方式の種類
1.直接接地方式
変圧器の中性点をインピーダンスを介さずに直接大地電位に接続する方式。
基幹送電系(187~500kV)で採用されている。1線地絡時における健全相の対置電位は、
ほとんど上昇せず、線路・機器の絶縁レベルを軽減できる。

変圧器の中性点を常時大地電位に保たれることから、巻線の段絶縁ができ変圧器の経済的設置が
可能となる。しかし、地絡電流が大きいため、通信線に対する電磁誘導障害や各機器に与える
影響が大きい。また、事故継続時間が系統安定度に大きく影響するが高速遮断する事で
対応可能である。

2.抵抗接地方式
地絡時の過電圧を防止し、地絡保護継電器を確実に動作させるため、変圧器の中性点抵抗を介して
接地する方式。11~154kV系統に採用されている。ケーブル系統などでは対地充電電流を
補償するために、中性点補償リアクトルを併用することがある。

直接接地方式に比較して地絡電流が小さいため、電圧要素である零相電圧と電流要素である
地絡電流とを組み合わせることで、地絡事故の方向を判断でき確実な検出ができるようにしている。
また、ケーブル系統のように送電線の対地静電容量が大きい場合、対地事故発生時は、
過渡突入電流が流れ送電線対地静電容量によっては、保護継電器が誤動作するおそれがあるので、
継電器に適当な時間遅れを持たせる必要がある。

3.消弧リアクトル接地方式
中性点に消弧リアクトルを設置し、そのリアクタンスと系統の対地静電容量を共振させ、
零相インピーダンスを無限大として、地絡故障電流をほとんど零とし、故障アークを自然消弧し、
送電を継続させる方法。

4.非接地方式
変圧器の中性点も接地しない方式。22kV以下の低電圧・小規模な系統で採用される。

問2 短絡容量抑制対策
【解説】
・短絡容量増加に伴う問題点

系統連携の強化による設備形成の効率化・系統運用の円滑化・供給信頼度の向上、また、
電力自由化に伴う発電事業者の増加などにより短絡電流が増加傾向にある。
直截接地系統においては、地絡電流が短絡電流を上回る場合があり、
短絡電流と同様に増加傾向にある。

このように短絡・地絡電流の増加に伴って発生する問題点は、次のとおりである。

(1)遮断器の遮断容量不足
系統に短絡・地絡事故が発生した場合、遮断器により事故点系統から切り離す必要がある。
遮断容量不足では、最小限度による確実な事故遮断ができなくなり広範囲での遮断となり
系統に与える影響が大きくなる。

(2)直列機器容量不足
直列機器には大きな短絡・地絡電流が通過し、それに伴い各機器に対する発熱、電磁力に耐える
必要があり、機器が大型化するとともに建設コストが増大する。

(3)通信線への電磁誘導障害増加
直截接地系統での一線地絡事故や、抵抗接地系における地絡を伴う短絡事故では、
通信線への電磁誘導障害が増大する。

(4)接触・歩幅電圧の増加
事故時の鉄塔付近等の接触電圧・歩幅電圧が高くなり、人畜に危険を与えるおそれがある。

2.短絡容量の抑制対策

(1)系統(母線)分割
変電所の母線を分割し、一つの電力系統を複数の系統に分ける事によってインピーダンスを
増加させ、短絡電流を抑制する方法である。この方法では系統連携のメリットを損ない、
供給信頼度を低下させるため、運用面での十分な検討が必要となる。

(2)事故時系統分離
常時は母線を併用しておき、送電線事故時には事故個所の遮断に先行して母線を分離し、
系統短絡容量を軽減する方法である。この方法は系統連携のメリットを損なわずに運用できる
利点があるが、系統分離用保護制御装置には高信頼性が要求される。
事故除去時間に対する適切な検討が必要がある。

(3)高インピーダンス機器の採用
発電機、変圧器のインピーダンスを大きくして短絡電流を減少させる方法である。
発電機や変圧器のインピーダンスを大きくすると銅機械となるため、機器を小型化し安価にする
ことができるが、電圧変動率が大きくなり安定度が低下し、また、効率も低下するなどの問題が
生ずる事から、総合的に検討してインピーダンス値を決める必要がある。

(4)限流リアクトルの採用
送電線や母線にリアクトルを挿入し、系統のインピーダンスを増加させ短絡電流を抑制する方法で、
送電線に直列に挿入する方法と発変電所の母線間に挿入する方法とがある。
送電線に挿入する方法は常時負荷電流が流れるため、リアクトルの容量が大きく、無効電力損失も
増加し系統の電圧安定性低下や安定度が低下する。発変電所母線間に挿入する方法は、
系統構成によっては通過電流を小さくでき、リアクトルの容量は小さくする事ができるが、
あまり小さくしすぎると母線や送電線の停止時に系統運用が複雑になる。

(5)直流送電等で連系
交直変換装置により系統を連系すると有効電力を送れるが、無効電力は送らない。
短絡電流のほとんどが無効電力であり、また、制御装置により高速に通過電力を抑制しているため
電力通過を遮断する事ができる。

問3 電力系統における高調波の発生原因と抑制・目標レベル
【解説】
電力系統の負荷には線形負荷と非線形負荷とがあり、このうち非線形負荷は、印加電圧が
正弦波であってもひずみ波電流が流れるため、高調波電流発生源となる。発電機の誘起電圧も
完全な正弦波とすることは不可能であり、わずかではあるが高調波電圧源も存在する。

その他、高調波電流発生源としては、主として次のようなものがあげられる。

(1)変圧器、回転機などの磁気飽和によるもの
(2)アーク炉などの非線形負荷によるもの
(3)サイリスタ位相制御回路を有する機器によるもの
(4)整流器などの変換機器によるもの

通産省(現・経済産業省)資源エネルギー庁長官の私的懇談会である、電力利用基盤強化懇談会
(1986/7~1976/5)で高調波問題が取り上げられ、今後の取り組み方についてまとめた。
その中で、高調波環境レベルの目標値として総合電圧ひずみ率において6.6kV配電系5%、
特別高圧系3%が妥当であると報告された。

機器から発生する高調波電流を適正なレベルに維持又は抑制する事が必要であると指摘されている。

・需要家からの抑制対策
1.多パルス化
電力変換器を多パルス化することは、交流に含まれる高調波電流の次数が高くなり、その大きさも
減少する。通常12パルス以上を多パルス化という。

2.受動フィルタ(パッシブフィルタ)
コンデンサ、リアクトルを組み合わせ、特定の周波数又は領域で低インピーダンスとなる回路を設置し、
高周波電流を吸収する。

3.能動フィルタ(アクティブフィルタ)
負荷から発生する高調波電流を測定し、その高調波電流と逆位相の電流を発生させることで
高調波電流を打ち消す。

4.電力用コンデンサ(力率改善用コンデンサ)
コンデンサは高調波電流を吸収する機能があり、適切に設置することで高調波電流の
抑制効果がある。

【高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン】
1.目的
このガイドラインは、電気事業法に基づく技術基準を遵守した上で、商用電力系統
(以下「系統」という)の高調波環境目標レベルをふまえて、系統から高圧又は特別高圧で受電する
需要家において、その電気設備を使用することにより発生する高調波電流を抑制するための
技術用件を示すものである。

2.適用範囲
(1)このガイドラインの適用対象となる需要家は、次のいずれかに該当する需要家
(以下「特定需要家」という)とする。

 1. 6.6kVの系統から受電する需要家であって、その施設する高調波発生機器種類毎の
高調波発生率を考慮した容量(以下「等価容量」という)の合計が50kVAを超える需要家

 2. 22kV又は33kVの系統から受電する需要家であって、
等価容量の合計が300kVAを越える需要家

 3. 66kV以上の系統から受電する需要家であって、等価容量の合計が2000kVAを越える需要家

(2) (1)の等価容量を算出する場合に対象とする高調波発生機器は「家電・汎用品高調波抑制
対策ガイドライン」の適用対象となる機器以外の機器とする。

このガイドラインは、特定需要家(2)に該当する高調波発生機器を新設、増設又は更新する等の
場合に適用する。

なお、(2)に該当する高調波発生機器を新設、増設又は更新する等によって特定需要家に該当する
ことになる場合においても適用するものとする。

3.高調波流出電流の算出
特定需要家から系統に流出する高調波流出電流の算出は次によるものとする。

(1)高調波流出電流は、高調波発生機器毎の定格運転状態において発生する高調波電流を
合計し、これに高調波発生機器の最大の稼働率を乗じたものとする。

(2)高調波流出電流は、高調波の次数毎に合計するものとする。

(3)対象とする高調波の次数は40次以下とする。

(4)特定需要家の構内に高調波流出電流を低減する設備がある場合は、
その低減効果を考慮する事ができるものとする。

4.高調波流出電流の上限値
特定需要家から系統に流出する高調波流出電流の許容される上限値は、
高調波の次数毎に、表1に示す需要家の契約電力1kW当たりの
高調波流出電流の上限値に当該需要家の契約電力(kWを単位とする)を
乗じた値とする。

5.高調波流出電流の抑制対策の実施
特定需要家は、上記3.の高調波流出電流が、上記4.の
高調波流出電流の上限値を超える場合には、高調波流出電流を高調波流出電流の
上限値以下となるよう必要な対策を講ずるものとする。

(以下省略…、されちゃうのか…)

【高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン付属書】

1.目的
このガイドラインは、電力利用基盤強化懇談会(昭和62年5月)において系統の
総合電圧ひずみ率と高調波障害発生の関係を考慮して提言された
「高調波環境目標レベル」(6.6kV配電系統で5%・特別高圧系統で3%)を
維持するよう、高調波の発生者である需要化が高調波電流の流出を
抑制するための対策を行う際の技術用件を定めたものである。
(またも、以下省略…)

【ポイント】
1.電力系統の中性点接地の目的
1 異常電圧発生の防止
2 保護継電器の確実動作

・中性点接地法式の種類
1 直接接地法式
2 抵抗接地法式
3 消弧リアクトル接地法式
4 非接地法式

2.系統短絡容量増加
(1)短絡容量増加の問題
1 遮断器の遮断容量不足
2 直列機器容量不足
3 通信線への電磁誘導障害増加
4 接触・歩幅電圧の増加

(2)短絡容量増加の抑制対策
1 系統(母線)分割
2 事故時系統分離
3 高インピーダンス機器の採用
4 限流リアクトルの採用
5 直流送電等での連系

3.高調波の発生原因と目標レベル
1 変圧器、回転器などの磁気飽和
2 アーク炉などの非線形負荷
3 整流器などの変換機器

目標レベル:「高調波環境目標レベル」
(6.6kV配電系統で5%、特別高圧系統で3%)

以上です。長いなぁ…。どこまでが重要なのか…。