金曜日, 10月 26, 2007

二種二次試験電力管理、H12問5,6、補足

ここの補足、です。
問題文、解答内容については、ここ参照で。


問5
【解説】
電気設備の機能を維持し、より安定した系統条件で設備を運用していくことは良質な電気を供給するために欠かせないことだが、これに伴い必要となる機器操作や改修・点検作業において人身並びに設備の安全を確保することは電力技術者には重要な課題である。特に感電による人身災害は、主として不安全な行動による場合があり、この対策としては、人的な面からの対策と設備面からの対策に大別できる。

(1)人的な対策
人身災害の人的原因は行動の不適切、充電部あるいは操作機器の確認、知識の不足、作業手順の誤りなどがあり、対策としては次の事項が考えられる。

(a)機器および安全知識、技術の習得
機器知識・技能の不足や安全知識の欠如は事故の潜在的要因と考えられ、これらの習得は欠かすことの出来ないものである。また、これらに対する研修などは初級社員から安全管理の責任を担う者まで幅広く実施されるべきである。

(b)先取り安全対策の実施
潜在する危険を速やかに予知し、事前に一切を排除する危険予知訓練を導入することにより、作業員の危険予知訓練を導入することにより、作業員の危険予知能力の向上と習慣化の定着を図ることができる。また、この手法を作業着手前の打ち合わせにおいても実施すると、より効果的である。

(c)操作・作業手順の事前検討
操作・作業の手順を安全の側から分析し、この手順を守る。これについては検討結果をチェックシートに作成し、使用することが有効である。

(d)基本動作の励行
機器操作や作業実施に当たっては指差呼唱など規律の取れた基本動作を厳守するようにし、これに反するような操作や思いつき作業は絶対に行なわないようにする。

(e)監視の実施
作業は監視員をおき監視する。特に充電部近接または高所作業には責任者を置く。

(f)運転・作業の責任区分の明確化
作業場、標示札の設置、接地の取付などの作業開始までの手順は全て運転方の責任で行なった後、作業方に引き継ぎ、作業は作業方の責任で行い、終了後直ちに運転方に報告し、作業札を運転方に返すようにするなど責任を明確にしておく。

(g)その他
安全意識を高揚させるため安全講習、安全映画、スライドの上映、無災害記録運動、安全パトロールなどがある。

以上対策をあげたが、根本的には運転員・作業員一人ひとりが安全意識を持ち続けることが最も肝要である。

(2)設備面の安全対策
設備の改善等物的方法は一応人的な対策より確実な方法といえるが、それにはおのずから限界がある。設備面の安全対策についてあげると、次のようである。

(a)充電部に対する安全対策
充電部への接近防止のため、基本的には安全距離が確保できるように架台設置や機器配置を行なうが、必要に応じて防護網などを設置する。第1表、第2表に、安全距離について示す。

(b)隠ぺい化機器の採用
露出充電部がないキュービクル、固体絶縁開閉装置やGISなどを採用することにより、安全性・信頼性を高める。

(c)静電誘導対策
500kV変電所の充電部付近で作業する場合など静電誘導電圧の高いところでは適宜シールドし、電界の強さを低減させる。

(d)作業環境の整備
誤認しやすい聞き配置の改善、証明設備・色彩による区分、禁止標識板、危険標識板などの安全標識を設置するなど、環境を整備する。

(e)作業の安全対策
作業にあたっては、充電部と停止部をロープ、網、絶縁板、棒などで区画し、作業場、または立ち入り禁止区域を明確にする。また停止部に接地をつける。

なお、ヘルメット・安全帯・接地棒などの安全器具を整備し、それらを正しく使用する。

(f)適切な作業場所の確保
構内で作業する場合は安全に必要なスペースを確保する。特に充電部を停止して行う場合は、その停止範囲を十分検討する。またクレーン車など大形作業機器を使用する箇所は設計時にその作業スペースを十分考慮する必要がある。

(g)誤操作防止対策
手動開閉器の誤操作を防止するために配電盤と開閉器設置箇所とにタブレット(合い札)、合い鍵などを設置し、操作のときはこれを照合する。

また関連した遮断器の開閉状態などが、開閉器を開閉しても安全であるという条件になっていないときは、遮断機の開閉ができないようインタロック装置を設置する。

以上設備面の対策を列挙したが、変電所における運転・保守は必ず人間が介在するので人的な対策とあいまって相乗効果を上げることが肝要である。

問6
【解説】
(1)保護協調
保護協調とは、ある系統およびある機器に万一事故が発生した場合、故障発生源を早期に検出し、迅速に除去し、事故の波及・拡大を防ぎ、健全回路の不要遮断を避けることにある。保護装置がばらばらに動作すると、故障した部位が正確に選択できず、不必要に広範囲の停電を引き起こす場合が生ずる。このため、各保護装置相互間の適正な協調が必要となる。

(2)限時整定値
一般に、一般電気事業者は受電点継電器の整定に対し、第1表の値を基準としている。

しかし、構内配電系統の保護区間が多区間にわたる場合には、受電点の継電器の整定値をこの値にすると、設問の場合において上位・下位継電器の動作時間を0.35秒以上とることができない場合がでてくる。

いま、設問の系統構成において、動作時限整定差Sを0.35秒として、保護継電器Ry3の動作時間整定値を0.2秒とすると、継電器Ry2,Ry1の整定値は解答のようにそれぞれ0.55秒、0.9秒となり、一般電気事業者の要求である受電点0.6秒を超過する。このような場合、Ry3に瞬時動作要素付を用いて、Ry2とRy3の動作時間を同じ0.2秒とし、Ry1は0.6秒に整定すると、負荷側で短絡事故が発生した場合は瞬時要素が作動し、また過電流領域では継電器の反限時特性により動作時限差が得られ、同時に選択性が得られる。

この他の対策として、

1.区間保護方式の採用
2.電圧抑制付継電器の採用
3.CT比の差や電流タップの整定差を利用(区間間の事故電流差を利用)
4.一般電気事業者と受電点の整定地についての再協議

などが考えられる。いずれにしても、一般電気事業者受電点から負荷端までの保護協調曲線を作成し、詳細な検討を行なう必要がある。


以上です。