土曜日, 10月 20, 2007

二種二次試験電力管理、H13問3,4、補足。

ここの補足、です。
問題文、解答内容については、ここ参照で。


問3
【解説】
架 空送電線には、冬季に着氷、着雪がしばしば発生して、時には架空送電線に多大な被害・事故を発生させる。架空送電線の着氷雪事故は過大な着氷雪荷重による 支持物の倒壊、電線の張力切れなどの重大な設備被害の発生や着氷雪の脱落時に起こるスリートジャンプや着氷雪断面が非対称(飛行機の翼に似た翼上)のとき に起こるギャロッピングなどにより、線間短絡などの電気事故を誘発する事故とに大別することができる。

(1)着氷現象
着氷は、気 温が0℃以下になる時に発生するが、通常、0~-10℃での発生が多く、風速が大きいほど着氷量も多くなることがわかっている。さらに、着氷は地形の及ぼ す影響が大きく、山岳地帯で発生する山岳着氷と平地で発生する平地着氷に大別される。わが国では、地形、気象条件などから山岳着氷がほとんどである。

(2)着雪現象
着 雪の発生は、気温、風速、降雪量などによって左右されるが、この条件さえ整えば、平地・山地を問わず、どこでも発生する可能性があるので、着氷に比較する と事故の発生率が高い。氷点下の気温の時に降る雪は、水分をあまり含まず乾いているので、電線に衝突しても着雪となることはない。

しかし、気温0℃付近(0~+2℃程度)の降雪時は、雪片の一部が溶けて湿雪となっているため、水の表面張力の作用で電線に付着する。また、気温が+2℃程度以上では、雪は溶けて雨となり着雪とならない。

着雪の発達は、一般には第1図に示すように電線上に積もった雪がある程度大きくなると風の影響を受けて電線の周囲を回転し、雪の含有量が適当であると太く成長していくものである。

(3)ギャロッピング
ギャ ロッピング(gallopping)ごは、馬が全速力で駆けている様子を示す「動名詞」である。電線断面に非対称な形で氷雪付着が生じる傾向は、スペーサ のために電線の回転ができない複導体や多導体方式のほうが単導体方式より強い。したがって、複導体方式や多導体方式の場合に発生することが多く、また、電 線断面積の大きい電線路で発生する。このような電線路は、大形・長径間であるので電線の張力の割には電線重量が大きくなるので電線路の固有振動数は比較的 に低いことが推察され、実測によれば、振動の周波数の全振幅は、最大では10(m)以上となる大規模な振動のため、電線及びこれを支持するがいしとその金 具類への機械的なストレスは甚大である。

(4)スリートジャンプ
多雪地帯における雪害のうち、電線に対して脅威となるのは、氷雪付着による弛度および張力の増加、弛度の不ぞろいによる混触の危険、被氷雪が剥脱するときの電線の跳ね上がりによる混触の危険である。

跳 ね上がりの場合は、氷雪付着時のほぼ2倍の垂直振動をなすものと想定し、風の息と同時に起こるものと考えて、リサージュ楕円を描き、電線位置の相互関係の 協調を図ることもできる。また跳ね上がり時の電線は氷雪付着時に持っていた弾性エネルギーと位置エネルギーの和が一定の範囲で、上下左右に運動すると実験 的に言われている。

(5)着氷雪による事故防止対策
1.現場での除氷雪作業
2.支持物の強化
3.小サイズ電線の太線化、高抗張力電線の採用
4.難着雪電線・難着雪リングの採用
5.通電による着雪防止対策
6.防振装置の採用
7.相間スペーサの取付、オフセットの採用
8.ルート選定

問4
【解説】
水 トリー部における白濁部は詳細に観察すると微小なボイドの集合体といわれている。水トリーは電気トリーに比べて、かなり低電界でも発生する。内部半導電層 から発生した水トリーはケーブルの絶縁性能を大きく低下させる。布設後数年で運転中に絶縁破壊する場合もあり、このような状態ではtanδが増加し、直流 漏れ電流も増大する。外部半導電層から発生した水トリーも、内部半導電層から発生した水トリーと同様に絶縁性能を低下させるが、その影響は小さい。一方、 絶縁対中のボイドや異物から発生するボウタイ状水トリーも、その有害性は比較的少ない。第2図は劣化したCVケーブル絶縁対中の水トリーを示したものであ る。

水トリーの発生を抑制し、CVケーブルの高性能化の実現には、主としてCVケーブル製造技術の次のような改善からもたらされたものである。

(1)乾式架橋方式の採用
水蒸気中で架橋する湿式架橋方式に比べ、水トリーの原因となる水分や微小ボイドが減少した。

従 来の架橋方式としては、水蒸気架橋方式が広く用いられてきたが、架橋時の高温・高圧中で水蒸気が絶縁体中に侵入し、CVケーブルの性能に有害な水分やボイ ド生成の主要因となることが判明した。そこで、CVケーブルの性能向上ならびに高電圧化推進のため、絶縁体中の水分やボイドの低減を可能とする水蒸気を用 いない第3図のような乾式架橋方式が開発され、現在では赤外線、高温ガス、ダイスヒータなどの過熱方式を用いた各種の乾式架橋方式が実用化されている。第 4図に水蒸気架橋方式と赤外線架橋方式の破壊電圧の比較を示す。

(2)三層同時押出し技術の開発
絶縁層と内外の半導電層を同時に押出す方式によって、層間の密着性が良くなるとともに半導電層の突起の発生が減少した。

CV ケーブルの絶縁層は内部半導電層、絶縁体および外部半導電層の3層から構成されている。22・33kV級のCVケーブルの実用化当初は内部半導電層と絶縁 体を同時に押出して成型し、外部半導電層は半導電性テープからなる構造が採用された。その後、高電圧化を目指して部分放電特性や電気破壊特性の向上を図る ため、絶縁体と外部半導電層の界面の平滑性及び接着性に優れた、内部半導電層・絶縁体および外部半導電層の3層同時押出し・架橋技術が実用化された。現在 では、このタイプが22kV級以上のCVケーブルの標準構造として採用されている。

(3)絶縁対中への異物混入の防止対策
材料と製造中の異物の混入防止によって、金属粉や繊維などが減少した。

CV ケーブルの製造中の異物の追放は、異物混入経路を遮断することによって達成され、1.ウルトラスーパークリーングレード樹脂の開発、2.材料輸送工程の密 封システム化、3.材料の混合、押出し工程でのスクリーンメッシュの細分化などにより、異物レベルの格段の低減化が図られた。

なお、この他に66kV以上のケーブルには、シース下に遮水層を設け、水の浸入を防止する対策がとられている。

以上です。