土曜日, 11月 10, 2007

二種二次試験電力管理、H9問5,6、補足。

ここの補足、です。
問題文、解答内容については、ここ参照で。

問5
【解説】
電力系統における系統電圧の適正維持は、電力系統の安定運転を継続する上で基本となるものであり、電力品質を向上させるため、電圧調整設備および調相設備を設置して適正な電圧維持を図ることとしている。

こ れらの設備の設置に当たっては、基幹系統の電圧安定性確保のため、電源から配電に至る系統各部の適正な無効電力バランスをとって無効電力損失を極力抑制す るとともに、系統電圧ならびに需要端電圧を適正に維持するよう発電機からの無効電力の有効利用、電圧調整設備および調相設備の設置などを総合的に勘案し、 系統全体としてもっとも効率的となるよう計画、実施を進めている。

以下、電力系統の電圧調整に用いられている機器についての概略を述べる。

(1)発電機
発電機の端子電圧V、内部誘起電力Eおよび負荷電流Iの間には(a)の関係があり、また内部誘起電力Eは(b)式のように界磁電流Iに比例する。

=E-jXI…(a)
∝I…(b)
ただし、Xは発電機の同期リアクタンス

したがって、第1図のベクトル図のように、界磁電流を調整することによって発電機の力率角が変化し、無効電力を制御することができる。

発電機端子電圧Vを一定とした場合、界磁電流を増加すると内部誘起電力Eが大きくなり、力率角は送れて遅相運転となる。逆に、界磁電流を減少するとEが小さくなり、力率角は進んで進相運転となる。

発電機の界磁制御を行う方法としては、その検出要素により次の方法がある。

1.自動電圧調整器(AVR)
系統条件が変化し、発電機電圧があらかじめ定められた基準電圧に対して偏差を生じた場合、界磁電流を調整して発電機電圧を発電機電圧を基準電圧に維持する方法

2.自動力率調整器(APFR)
発電機の運転力率を監視し、あらかじめ設定された力率に対して偏差を生じた場合、界磁電流を制御し力率を維持する方法

3.自動無効電力調整器(AQR)
発 電機の無効電力を監視し、あらかじめ設定された基準向こう電力に対して偏差を生じた場合、発電機電圧限界値は、並列する電力機器を協調を図っており、上限 値は過励磁限界として定格電圧の5(%)増、下限値は所内補機運転電圧の磁保という観点から定格電圧の5(%)減とするのが一般的である。

(2)SVC
変動負荷による電圧フリッカの抑制、重負荷供給系統の電圧不安定現象の抑制、系統安定度の向上などを目的として無効電力を高速に制御できるSVCを採用する。

SVC には、リアクトルに流れる電流を連続的に変化させて無効電力を調整する方式と、コンデンサの容量を段階的に変化させて無効電力を調整する方式があり、いず れも適当な変圧器を介して系統に並列に接続されたものである。また、このほかにも電流形または電圧形インバータの。原理を応用したものなどがある

(3)負荷時電圧調整器付き変圧器
巻 線のタップに負荷をかけた状態で切り換える装置を負荷時タップ切換器といい、これを付けた変圧器を負荷時タップ切換変圧器という。一方、直列巻線を有する 変圧器と負荷時タップ切換器を組合わせ、直列巻線を線路に直列に挿入してその電圧(入出力同一絶縁階級)を調整する装置を負荷時電圧調整器という。

負 荷時電圧調整器は、変圧器バンクと組み合わせて使用されるが、負荷時タップ切換変圧器のほうが多く用いられている。直接式および間接式の結線(第2図) が、電圧・電流と採用される負荷時タップ切換器の機能によって選択され、負荷時タップ切換変圧器の電圧調整が行われる。万一の故障の場合にも、切り離せば 運転に支障をきたさないので、その信頼性は高い。

複数の電力系統が連系している場合、系統間に授受される有効電力および無効電力を、任意 の方向、大きさに制御し、かつ各系統の局部電圧を所要の値に保つには、系統に適当な大きさと位相をもつ電圧を挿入しなければならない。このように、回路電 圧の位相を調整するも目的に使用されるものを負荷時位相調整器といい、さらに、電圧調整機能を加えたものを負荷時電圧位相調整器という。

(4)同期調相機
同 期調相機はロータリコンデンサとも呼ばれ、同期電動機を無負荷運転し、広範囲に励磁電流を変えることができるようにしたもので、力率1のときはほとんど電 流は零で、励磁の強弱により送電線より流れ込む電流は全部無効電流である。すなわち励磁の弱いときはリアクトルとして働き90°遅れ電流をとり、励磁の強 いときはコンデンサとして働き90°進み電流をとる。

第3図はこの曲線を示したものである。この性質を利用し、送電線の電流の位相や大きさを変えて、送電線の定電圧送電を行なわせることができる。

(5)並列用電力コンデンサ・分路リアクトル
電力系統(変電所等)のあらゆる所に設置されており、第2種受験者であればその構造と機能はすでに第3種のときにマスタしていると思われるので説明は省略する。

問6
【解説】
電 力輸送に伴う送電損失が大きいのが不経済であるのはいうまでもないが、この損失電力軽減対策の価値は、かつての電力不足時代には損失を回収した分を需要家 に販売するものとして評価していたが、需要の安定した今日では、回収電力量によって火力発電量を減少し得るという考え方として成り立っている。

したがって、電力損失率が低下してきた現在では、電力損失軽減のみを考えた工事投資効果は採算限度を超過する場合が多く、供給能力拡大や電圧改善工事などいわゆるサービス面の改善、運用管理面の合理化などの付帯効果によるものが多くなっている。

(1)送電系統の損失低減対策
(a)都市部(高密度負荷中心)への高電圧系統導入
高電圧の採用は、大電力の安定送電が主目的であるが、損失軽減に寄与する。500(kV)化などが採用され、1000(kV)送電も計画されている。

都市の電力需要の増大で負荷密度が高くなり、送電電力も大容量となってきた。このため220~500(kV)級の高電圧系統で所要電力を負荷中心まで直接送り込むことを実施しており送電損失減少に効果を上げている。この方法は送電ルート節減・電力改善などの効果もある。

(b)送電線の新設、回線増設、電線の太線化
発電所からの送電距離が短くなるように送電線を新設する、増架により回線数を増加する、電線を太線化し張り替えるなどの工事は、電力損失軽減とともに供給能力拡大が図れる。

(c)調相設備の適正配置
負 荷で消費する無効電力、変圧器や送電線で消費する無効電力を発電端で発生し送電すると、線路電流の増加により送電線や変圧器の抵抗分による銅損が増加す る。このため電力用コンデンサ、分路リアクトル、SVC,SVQなどの調相設備を系統内に適正配置して無効電力の配分を合理化し、電力損失の軽減を図る。

(d)直流送電の採用
現在の送電系統は交流方式が多く採用されているが、直流送電は以下のような有利な面をもつので電力損失を低減できる。

1.リアクタンスの影響がないため、交流送電における安定度の問題がなく、長距離大電力送電に適し、送電系統をシンプルに構成できることもある。

2.交流のような静電容量による充電電流が流れないため、誘電体損失が発生しないと同時に補償のための分路リアクトルを接地する必要がない(特にケーブル送電の場合に有効)。

系統関連系に適用すると、潮流調整の容易化、短絡容量増大の抑制、非同期連系などを要求される場合、系統連系がしやすくなり、系統連系による損失軽減を期待できる。

(2)配電系統の損失低減対策
配電線路は需要端に最も近い設備であるため、電力損失の軽減は、配電設備のみでなく、配電用変電所以上の上位系統にも効果が及ぶことになる。

(a)配電線路の新設または太線化
変電所を新設して配電線を新設・分割し、こう長を短くする、回線数を増加する、電線を太いものと張り替えるなどの工事により線路抵抗を減少させる。

(b)配電電圧の昇圧
負 荷電流が減少すると、その2乗の大きさで損失が減少するので、配電電圧の昇圧は損失軽減に大きな効果がある。このため従来の3(kV)配電線はほとんど6 (kV)昇圧されたが、一部地方のこう長の長い配電線では10.4(kV)昇圧、大都市過密地区で22(kV)昇圧が実施されている。

また、低圧線路においても単相2線式の単相3線化、低圧配電電圧の格上げ(200V,40V供給)を実施する。

(c)力率改善用コンデンサの設置
配 電設備は負荷を含めて本来誘導性であるため、力率改善用コンデンサを設けると線路の無効電流を減少させ損失電力を軽減することができる。その設置場所と容 量については、低力率機器になるべく近く取り付けて得られる損失軽減、設備容量節減の有利性と、コンデンサの分散配置によるコスト上昇とから、最も経済的 な場所と容量を決定する。この場合、軽負荷時の運用効率を高めるために、スイッチドキャパシタが広く利用されている。

(d)柱上変圧器鉄損の軽減
柱上変圧器の鉄損は鉄心材料の進歩とともに減少してきたが、冷間圧延方向性けい素鋼板の採用と巻鉄心化によって大幅な低減が可能となり、従来品に対して約30(%)の鉄損を軽減することができる。さらに、アモルファス鉄心の採用についても検討する。

(e)ネットワーク方式の採用
20(kV)級電源変電所から引き出した20(kV)級地中配電線路を当該需要家に引き込み、受電用遮断器を経て、変圧器(ネットワーク変圧器と呼ぶ)に接続し、常時供給する方式(第1図)であるSNW(スポットネットワーク)方式を採用する。

一般低圧需要家の供給にRNW(レギュラネットワーク)方式を採用する(第2図)。

(3)系統運用の改善による損失低減対策
送配電損失の軽減は設備面の改善だけでなく、供給運用の対象となる送電系統では、次のような対策により運用面で改善することが行なわれる。

(a)送電潮流のループ化と直列コンデンサの採用
電 力系統において電源と負荷を結ぶ多数の回路がある場合に、これらを結んでループ化すれば送電損失が最小となるように潮流を配分できる。さらに、ループ系統 や平行2回線送電の場合(電圧は異なってもよい)、直列コンデンサの採用により、潮流を最小損失となるように運用する。

(b)電力潮流の制御を適性にする
電力系統内の有効電力潮流を適正に制御するとともに、無効電力潮流が大きいと損失も大であるから調相設備を適正に制御して、それらの減少をはかる。

(c)運転電圧の適正制御
系統電圧を定格以下で運転すると、電圧低下によって鉄損・誘電体損などは低下するが、電流増加による銅損の増加が大きく損失電力は増大する。したがって、運転電圧が定格以下とならないように、系統内に配置した電圧調整装置(LRT,SC,ShRなど)を適正に運用する。

(d)変圧器運転台数の選定
変圧器の損失には鉄損と銅損があり、鉄損は、変圧器の負荷に無関係であるが、銅損は負荷の2乗に比例して増加する。一般の変電所では、複数の変圧器を並列運転することが多いので、変電所負荷が減少した場合、運転台数を減少して損失を軽減する。

以上です。