ここの補足、です。
問題文、解答内容については、ここ参照で。
問1
【解説】
誘導電動機の一次電流とトルクを滑りsをパラメータとしてグラフに表すと第1図に示すようになる。このうち滑りsが2>s>1の範囲が誘導制動機の運転領域である。この領域は、固定子巻線によって発生する回転磁界の回転方向と、回転子の回転方向とが互いに逆方向となる。したがって、回転子には強力な制動トルクが加わる。また逆相制動は、回転子の回転速度が低いほど制動トルクが大きくなり、回転子を急速に停止させる事ができる。
回転子の回転速度が低下して、やがて停止した時、そのまま放置すると今度は回転子が逆方向に回転し始めるので、時限継電器や零回転検出継電器を用いて誘導電動機の一次側を電源から切離す。
三相誘導電動機では、任意の2相の電源端子を入れ換える事で、相回転が逆になるので逆相制動をかけることは。容易であるしかし、逆相制動を行うと定格電流の500~800(%)程度の過大な電流が電動機に流れ込むので、二次抵抗を十分大きくして電流を制限し、電動機の発熱を抑える必要がある。
逆相制動はプラッギング(Plugging)ともいわれる。
逆相制動時には滑りs=2(逆相)からs=1(停止)まで変化する。
ちなみに無負荷の三相誘導電動機における始動時の二次銅損は、次のようになる。
回転子は、無負荷であるので、ほぼ同期角速度ω0まで上昇する。このとき二次側に供給されるエネルギーW(J)は、始動時間をT0(s)とすれば、メインP2の式に回転体の運動方程式T=J(dω/dt)を代入して、積分すれば求めることができる。
W=∫P2dt(∫範囲0~T0)
=∫Jω0dω(範囲0~ω0)
=Jω0|ω|(0~ω0)
=jω0^2 (J)
一方、二次銅損として消費されるエネルギーWc(J)は、Pc2の式を用いて、
Wc=∫sP2dt(0~T0)
=∫J(ω0-ω)/ω0dω(0~ω0)
=J(ω0-ω)dω(0~ω0)
=J|ω0ω-1/2・ω^2|(0~ω0)
=1/2・Jω0^2
この式で示される始動時の二次銅損と、問1で求めた逆相制動時に生じる二次銅損とを比較すると、逆相制動時には、始動時の3倍の電力消費(発熱)があることになる。したがって、逆相制動時は回転子の発熱に注意する必要がある。
また、上式より、始動時に二次側に供給される1/2が銅損として消費される事がわかる。
問2
【解説】
変圧器の等価回路を第1図に示す。この等価回路は、一次側と二次側のインピーダンスをそれぞれZ1およびZ2、励磁アドミタンスをY0としている。この等価回路は、励磁回路を一次巻線の入力側に移したもので、簡易等価回路またはL形等価回路といわれる。この等価回路は、計算に便利なためよく用いられている。この等価回路に示す諸量は、以下に示す試験によって求めることができる。
(a)無負荷試験
変圧器の二次側を開放して一次側に電圧計と電流計および電力計をそれぞれ接続する。そして一次側に定格周波数の定格電圧V1n(V)を加える。このとき流れる励磁電流I0(A)と入力電力Pi(W)を測定する。この入力電力は、無負荷時の変圧器の損失、すなわち鉄損である。また、測定した結果から変圧器の次に示す諸量を求めることができる。
励磁コンダクタンス g0=Pi/V1n^2 (S)
励磁アドミタンス Y0=I0/V1n (S)
励磁サセプタンス b0=√(T0^2-g0^2) (S)
(b)短絡試験
変圧器の二次側を短絡して一次側に電圧計と電流計および電力計をそれぞれ接続する。このとき一次側に定格電流I1nが流れるように一次電圧V1sを調整する。この定格電流を流す一次電圧V1sをインピーダンス電圧という。インピーダンス電圧V1sは定格電圧に比べると数%と低い値なので変圧器の励磁が飽和しない。このため鉄損を無視することができ、電力計の読みから銅損Pcを測定する事ができる。求めたい銅損Pcから変圧器インピーダンスの抵抗分Rとリアクタンス分Xを求めることができる。
R=R1+a^2R2=R1+R2=Pc/I1n^2 (Ω)
X=X1+a^2X2=X1+X2
=√{(V1s/I1n)^2-(Pc/I1n^2)^2} (Ω)
ただし、
R2:変圧器の二次側インピーダンスの抵抗分
a:変圧比(巻線比)
R:変圧S期の一次側から見た抵抗分(Ω)
R1:変圧器の一次側インピーダンスの抵抗分(Ω)
R2:変圧器の二次側インピーダンスの抵抗分(一次側換算)(Ω)
X:変圧器の一次側から見たインピーダンスのリアクタンス分(Ω)
X1:変圧器の一次側インピーダンスのリアクタンス分(Ω)
X2:変圧器の二次側インピーダンスのリアクタンス分(一次側換算)(Ω)
X2:変圧器の二次側インピーダンスのリアクタンス分(Ω)
また、インピーダンス電圧を定格一次電圧V1nに対する百分率で表したものを短絡インピーダンスまたは%インピーダンスzといい、次式で表す。
z=V1s/V1n・×100=(Z1+Z2)I1s/V1n×100(%)
なお、上述した短絡インピーダンスは、二次側を短絡し、一次側から定格電流を流して求めたものであるが、逆に一次側を短絡して二次側から二次側の定格電流I2nに等しい電流を流しても同じ値となる。つまり、変圧器を二次側から見たときの一時側と二次側のインピーダンスをそれぞれZ1、Z2とすれば、短絡インピーダンスを次式で求めることができる。
z=(V2s/V2n)×100=(Z1+Z2)I2s/V2n×100
=(Z1+Z2)I2n/V2n×100
これら2式の値は、同じ値となる。
次に変圧器の二次側から見た等価回路を第2図に示す。この等価回路は、解析を容易にするため励磁回路を無視したものである。この等価回路に示すように変圧器の二次側には、インピーダンスがRL+jXL(力率角θ)の負荷を接続している。
この等価回路を用いると第3図に示すベクトル図が得られる。
このベクトル図においてV20は、二次側を無負荷にしたときの変圧器二次側電圧であり、V20=V1/aである。このV20は、ベクトル図から次式で表すことができる。
V20=V1/a
=√{(V2n+I2nrcosθ+I2nxsinθ)^2
+(I2nxcosθ-I2nrsinθ)^2}
=V2n√{(1+I2nr/V2n・cosθ+I2nx/V2n・sinθ)^2
+(I2ns/V2n・cosθ+I2r/V2n・sinθ)^2}
=V2n√{(1+p/100・cosθ+q/100・sinθ)^2
+(q/100・cosθ+p/100・sinθ)^2}
ここに、
p=I2nr/V2n×100=I1nR/V1n×100(%)
q=I2nx/V2n×100=I1nX/V1n×100(%)
であり、rおよびxは、それぞれ変圧器の二次側から見たインピーダンスの抵抗分(R1+R2)およびリアクタンス分(X1+X2)であり、RおよびXは、それぞれ変圧器の一次側から見たインピーダンス抵抗分およびリアクタンス分である。このpは、短絡インピーダンスの抵抗分または%抵抗と呼ばれる。また、qは、短絡インピーダンスのリアクタンス分または%リアクタンスと呼ばれる。それぞれ、上述した%インピーダンスと同じように、一次側から求めても、二次側から求めても同じ値になる。
さて、変圧器の電圧変動率εは、変圧器の二次側に定格力率で定格電流をとるような負荷を接続して、そのときの二次電圧が定格電圧V2nになるように一次電圧を調整した後、変圧器を無負荷にしたときの二次側電圧がV20であったとすれば、次式で定義される。
ε=[√{(1+p/100・cosθ+q/100・sinθ)^2
+(q/100・cosθ-p/100・sinθ)^2}-1]×100
この式で、A=p/100・cosθ+q/100・sinθ、B=q/100・cosθ-p/100・sinθとおく。すると次式を得る。
ε=[√{(1+A)^2+B^2}-1]×100
=[(1+A)√{1+(B/(1+A))^2}-1]×100
この式のA,Bはいずれも1より極めて小さいので、二項定理を用いて次式のように変形する事ができる。
ε=[(1+A){1+(B^2/2(1+A)^2)}-1]×100
=[(1+A)+(B^2/2(1+A)}-1]×100
さらにこの式の1+A≒1として、A,Bを元に戻せば、次式に示す電圧変動率の公式を得る。
ε=(A+B^2/2)×100
=Pcosθ+qsinθ+(qcosθ-psinθ)^2/200(%)
電験第3種のときに学習したように定格負荷時の電圧変動率ε(%)を次式に示す近似式で計算すると、上述した解答と異なった値となるので注意が必要である。
ε=Pcosθ+qsinθ
=1.383×0.8+3.485×0.6=3.197≒3.2(%)
第2種の場合、近似式ではなく、ここで求めた電圧変動率の式を用いるべきであろう。
【指導】以上の式変換は、二項定理を用いた。この二項定理は、x<1のとき次式に示すように変換する事ができるという定理である。
√(1+x)=(1+x)^1/2≒1+x/2
以上です。
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