火曜日, 6月 12, 2007

短絡容量増大対策の問題、の補足

ここの補足です。

問1 短絡容量抑制対策
(1)短絡容量増大の背景
最近の電源開発は、大容量揚水式水力、大容量火力、大容量原子力を主流として行われている。
系統運用の信頼性や系統としての特性の向上を図るため、超降圧系統連系の強化などの理由で
系統短絡容量が増大してきた。

(2)短絡容量増大に伴う問題
a.短絡事故時の大電流を遮断できる大容量の遮断器や
大電流による電気的および機械的な衝撃に耐えうる断路器や変流器などが必要となる。
これに伴い、これらを接続する母線やこれを指示する鉄溝もまた大型化し、
設備費が高くなると共に、技術的にも難しくなってくる。

b.2線地絡などの地絡を伴う短絡事故時に地絡電流が増大し、
付近の通信線に電磁誘導障害を与えたり、地絡事故点の鉄塔付近の接触電圧、
歩幅電圧が高くなり、人や動物に危険を与えるおそれが高まる。

c.故障電流の増加に伴って、架空線では導体の温度上昇やクランプの過熱による溶断、
地中線では故障点の損傷や他の地下埋設物への障害を与えるおそれが高まる。

(3)短絡容量増大対策
電力系統上のある点の短絡容量が大きいと言う事は、
その点における電源側インピーダンスが小さいと言う事である。
したがって、短絡容量抑制の基本は、高インピーダンス機器の挿入、
および網状に形成された系統の分割、分離であると言う事ができる。
直流送電の特性を生かした短絡電流の阻止は後者に分類される。

次に短絡容量抑制対策の項目をあげる。
・高インピーダンス機器の採用
・限流リアクトルの採用
・系統分割方式または系統分離方式の採用
・上位電圧系統の導入による既設系統の分割
・直流による交流系統相互の連携
この各項目ごとの内容については次の問2で解説する。

問2 電力系統における短絡容量の増大対策
この問題は、限流リアクトルによる短絡容量の抑制対策である。
短絡容量抑制対策としては、次のようなものがあり、
各方式の特徴を総合的に勘案して最適な方式とする。

(1)高インピーダンス機器の採用
発電機や変圧器のインピーダンスを高くして短絡容量を抑える方式である。
一般的に、高インピーダンス機器は銅機械となるので、系統の電圧変動率が大きくなり、
安定度は低下する。一方、機器の利用率が向上し、
制作費が安価になるなどの利点もあるので、
これらを勘案して最適インピーダンスを決定する。

(2)限流リアクトルの採用(問題の図で、添付図1)
問2の記述中にあるように、母線に限流リアクトルを挿入して短絡容量を軽減する方法であり、
直列リアクトル方式および分離リアクトル方式の二通りがある。

限流リアクトルの設置に置いては、事故時のフラッシュオーバ、
再起電圧、リアクトルの保護など技術面で留意する必要がある。

(3)系統分割方式または系統分離方式の採用

系統を分けて短絡容量を抑制する方法である。

(a)系統分割方式:常時母線を分離しておく方式

(b)系統分離方式:常時は母線を連携した状態で運用し、
事故時に母線を開放した後、事故点の遮断器を開放する方式

(a)方式は、最も有効な方式であるが、
系統連系の利点が著しく損なわれる欠点がある。
(b)方式は、系統連系の利点は維持できるが、
各バンク負荷の不平衡および事故除去の遅延などの欠点がある。

(4)上位電圧系統の導入による既設系統の分割

高次の電圧階級の系統を新規に導入し、従来の系統を部分的または
全体的に分割する方法であり、短絡容量抑制技術の中では効果的な方法の一つである。

(5)直流による交流系統相互の連携

交直変換装置を介して系統を連携すると、
有効電力だけが伝送され無効電力は伝送されない。
一般的に短絡電流は無効電流である為、連携の主目的である有効電力の融通により
周波数を確保しつつ、短絡電流を抑制することができる。
しかしながら、交直変換装置が高価であるため、
交流連携に比較して大幅な費用増となる。