ここの補足、です。
問題文、解答内容については、ここ参照で。
問5
【解説】
送 電線と通信線が接近しているとき、相互の誘導的結合によって、通信線に電圧が誘起される現象を電磁誘導といい、通常、高電圧の三相送電線は故障以外はほと んどバランスして相電流が流れているので、大電流が流れてもある程度通信線が離れていると、各相と通信線の間の相互インダクタンスはほとんど等しく、電磁 誘導電圧は生じない。
しかし、送電線に地絡が発生して過大な電流が流れると、その大地を帰路とする電流成分による電磁
導作用によって、通信線に大きな電磁誘導電圧を生じ、通信線の作業員に危害を加えたり、通信機器を破壊するなどの障害を与えるおそれがある。
(1)異常時誘導電圧(1線地絡故障)の求め方
送電線に1線地絡故障が発生したときに、電磁誘導により通信線に発生する誘導電圧Vm(V)を表す式は、次のように求めることができる。
電磁誘導障害は第1図(添付)のように原理的には相互インダクタンスを持つ電気回路で考えられ、閉
回路の相互交さ磁束によって生ずる。
したがって、図のようにIe、φ、eの正方向を決めれば、通信線に生じる単位長あたりの誘導電圧は、
e=dφ/dt
ここで両導体間の相互インダクタンスをM(H/m)とすると、Mi=Nφ→φ=Mi/Nを代入し、
e=M (d/dt) ・Ie sinωt
=ωMIe cos ωt (V)
次にD(m)を乗じ絶対値を求める。
∴Vm=|jωMIeD|=2πfMIeD(V)
が求まる。また、三相送電線を考えると、各相の電線と通信線間の相互インダクタンスの相違を無視して、第2図(添付)のように、Ma≒Mb≒Mc≒Mとすると、
Vm=j2πfMD(Ia+Ib+Ic)
=j2πfMD3I0(V)
で表される。ただし、上式のI0は零相電流を表す。
したがって、上式より電磁誘導は送電線の零相電流によって誘起される事がわかる。
(2)電磁誘導障害対策
電磁誘導電圧の制限値はわが国では、中性点直接接地方式の超高圧送電線の場合は430(V)、0.1秒その他の送電線では、300(V)を基準としていることは前述(メイン)の通りである。
国際電信電話諮問委員会では、一般の送電線では430(V)、0.2秒(小電流の場合、最大0.5秒)以内に故障電流が除去できる高安定送電線では、人体の危険が大幅に減少するので、650(V)までを許容している。
(a)送電線側の対策
解答(メイン)参照
(b)通信線側の対策
1.ルートを変更して送電線の隔離を大きくしたり、交さする場合はできるだけ直角とする。
2.アルミ被誘導遮へいケーブルのような特殊遮へいケーブルを採用し、遮へい係数を60(%)以下にする。
3.通信回線の途中に中継コイルあるいは高圧用誘導遮へいコイルを挿入して、誘導こう長を短くすることにより、誘導電圧を分割または軽減する。
4.避雷器や保安器を設置する(V-t特性のよいもの、避雷器の接地はA種)。
5.通信線と送電線の間に導電率のよい遮へい線を設ける(通信線に近く設置するほど効果は高い)
問6
【解説】
この問題は、ある系統負荷に複数台の火力発電機で電力を供給する場合、どのように負荷を配分すると最も経済的であるかを求めるものである。一般的にこの種の問題については等増分燃料費法(等増分率配分法ともいう)がとられている。
ここで説明を簡単にするために、第1図(添付)のような発電機2機系統について考えてみる。この場合の供給力と系統負荷の間には次の関係がある。
P1+P2=PR (1)
また、それぞれの発電機の燃料費をF1、F2として、総燃料費をFとすると、
F1+F2=F
となる。さらに燃料費は発電機出力の関数として表せるから、
F1+F2=f(P1)+f(P2)=F (2)
となる。すなわち火力系統の経済運用とは(1)式で示される需要条件のもとで、総燃料費Fを最小とするP1およびP2を求めることである。
これについては、「ラグランジュの未定係数法」が用いられる。それにはラグランジュの未定係数をλとして目的関数をφとすると、
φ=F-λPR=F1+F2-λ(P1+P2)
とおいて、
dφ/dP1=0、dφ/dP2=0
となる関係を求めれば良い。上式より、
dF1/dP1=dF2/dP2=λ
の関係が成立する。
この場合のλは、いわば火力発電機の増分燃料費であって、各機の増分燃料費が等しいときに、全燃料費が最小(最も経済的)になる事を示している。
以上、火力発電機2台について述べたが、多数(n台)についても同様に考える事ができる。すなわち、
n
ΣPi=PR
i=1
また、等増分燃料費法より、
dF1/dP1=dF2/dP2=…
…=dFn/dPn=λ
として、多機系(n台)の火力発電機の経済運用にも適用される。
この解法は、次の条件が満足された場合にのみ成立する。
1.対象とする火力発電機は平行運転されていること。
2.入力-出力曲線が連続的に増加していること(第2図のF曲線のように漸増していること)
3.増分燃料費が出力増大に伴って減少しないこと(第2図のdF/dPが漸増していること)
実際の電力系統の経済運用については、調整式水力発電所の水の有効利用、送電線の損失を最小(ロス・ミニマム)の条件などを総合勘案して運用がなされている。
ここにおいては、火力系統にのみについての問題を取り上げたが、水火力併用の経済運用についても第2種受験者はその概要程度の学習をしておくことが大切である。
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