水曜日, 10月 03, 2007

二種二次試験電力管理過去問、H16問1,2、補足。

ここの補足、です。
問題文、解答内容については、ここ参照で。


問1
【解説】
系統の負荷と水車の出力が平衡を保っていると、回転速度は安定しているが、系統の負荷が増加(または減少)すると、周波数が低下(または上昇)して、調速機は水車の出力が増加(または減少)するように動作する。

こ のように、ある有効落差、ある出力で運転中の水車の調速機に調整を加えずに直結発電機の負荷を変化させたとき、定常状態における回転速度の変化分と発電機 負荷の変化分との日を速度調定率という(負荷間調定率ということもある)。なお、負荷変化前の回転速度は、これを定格回転数に保つものとして定義される。

ここに、n01をある負荷における回転速度(min^-1)、n02を負荷変化後の回転速度(min^-1)、n00を定格回転速度(min^-1)、P01をある負荷(kW)、P02を変化後の負荷(kW)、P00を基準出力(kW)とすると、速度調定率α(%)は次式で表される。

α=[{(n02-n01)/n00}/{(P01-P02)/P00}]×100(%)

これを図示すると、1図(添付手書)のようになる。

また、系統周波数と回転速度の関係は、発電機の極数をp、系統周波数をfとすれば、回転数nは、

n=120/p・f=Kf(Kは定数)

である。したがって、ある負荷の系統周波数をfとし、負荷変化後の系統周波数がfであったとすると、
01=Kf
02=Kf
であるから、速度調定率は次のように変形される。

α=[{(Kf-Kf)/Kf}/{(P01-P02)/P00}]×100(%)

ただし、fは定格周波数であるが、系統と平衡している。ある負荷の系統周波数が定格周波数であったわけであるから、本問ではf=fである。したがって、次式が成り立つ。

α=[{(f-f)/f}/{(P01-P02)/P00}]×100(%)

【Masha補足】
さて、ここで本問をもっと簡単に解けないか?と考えてみた。変化後の各負荷(負荷の割合)を、速度調定率と定格値で求まるはず、ということで考えて見ました。
2台の発電機で、速度調定率を、α、βとし、出力変化分、としてP、P(=P01-P02)とする。周波数変化分に関する定数をK(=(f-f)/f)とすると、
α=K/(P/P)、β=K/(P/P
(P,Pはそれぞれ変化前の出力→本問では定格)
両式をKについて解くと、
αP=βP
となり、出力変化分Pは、
=P(βP/αP
となる。これにより、出力の変化分は速度調定率と定格負荷(変化前の負荷配分)から求められることになる。

問4
【解説】
調相設備には、同期調相機、電力用コンデンサ、分路リアクトルおよびSVC(静止型無効電力補償装置)がある。

同 期調相機が設置されたのは、系統の規模が比較的小さく、受電端より試送電の必要のあった昭和30年ごろまでであった。大電力網が形成され、その必要がなく なるに至って、静止型のため保守が容易で経済的な電力用コンデンサおよび分路リアクトルが採用されるようになった。しかし、交流系統故障時に内部誘起電圧 を一定に保つことにより、系統電圧低下時も無効電力を出力し続ける事ができ、また回転機の慣性力が過渡的な周波数変動時も一定の周波数での運転を可能とす るため、SVCや電力用コンデンサとは異なる特性により、系統電圧の安定性維持のためには不可欠なものとして同期調相機が見直され、昭和63年ごろより再 び脚光を浴びた。

同期調相機、電力用コンデンサ、分路リアクトル、SVCの比較を第1表(添付)に示す。

また、最近、負荷変動対策や系統安定度向上対策などで高度の制御性が要求される場合に、SVCが採用されている。さらに、自励式変換器の無効電力制御能力を活用した静止型無効電力補償装置(STATCOM:自励式SVCやSVGなどとも呼ぶ)が採用されるようになった。

(1)同期調相機(RC)
同期電動機を無負荷状態で運転し、界磁電流を変化させて無効電力を調整する。高価で保守が難点という欠点はあるが、即応性が良く、調整が連続的である長所により系統の種用箇所に設置される。

同 期電動機の励磁電流を加減すると、その力率は第1図(添付)のV曲線を示す。同期調相機は同期電動機を無負荷運転するもので、励磁電流が少ない場合は遅れ 電流が流入して分路リアクトルとして働き、励磁電流を大きくすると進み電流が流入して電力用コンデンサとして機能する。

(2)電力用コンデンサ(SC)
電 力用コンデンサは、電力系統で負荷と並列に接続され、進相無効電力を吸収して力率を改善することで、受電端における電圧降下を抑制するためのものである。 保守が容易で経済的な静止器の利点に加え、必要に応じて適当容量の増設が可能であるが、その反面、周波数や電圧が低下すると供給できる無効電力が減少する 欠点などがある。

電力用コンデンサは、母線に挿入するコンデンサ容量(個数)を加減することにより、それに流れる進み電流を調整して、電圧調整を行うものである。

コ ンデンサ設備の結線例を第2図(添付)に示すが、通常コンデンサ容量の6(%)程度の直列リアクトルを挿入することにより、投入操作時の過渡電流の制限、 電圧・電流ひずみの軽減、開放時の再点弧の防止、過大電流の防止などを図っている。また、系統への接続は変圧器の三次側ほか、第3図(添付)のように高電 圧母線にも接続される。

最近では、地価が高騰して変電所所要地の取得がますます難しくなったことから、66(kV)以上の場合に従来使用していた絶縁架台を省略し、コンパクト化した大地据置式小型大容量コンデンサが盛んに採用されている。

(3)分路リアクトル(ShR)
分 路リアクトルは、長距離送電や地中送電において、線路の充電電流のため受電端電圧が上昇する事を抑制するためのものである。特に軽負荷時や無負荷時には、 受電端電圧の上昇が著しく、変電所機器などの絶縁をおびやかすことも考えられるほか、系統の安定運転の面からも、適当な容量の分路リアクトルを設置し、受 電端電圧の変化をある一定の範囲内に収める事が必要である。

分路リアクトルは、長距離送電や地中ケーブル電線における線路充電電流の進相 無効電力による系統電圧上昇の抑制のため設置し、送電線路に直付けされる場合と変圧器の三次巻線に接続される場合がある。今後の傾向として、大容量電源立 地の遠隔化や系統安定度の向上ほか、系統の過渡過電圧低減にも効果のある線路直付けリアクトルが多様化されることが予想される。

また、分 路リアクトルは電源からの送電線の長距離化と高電圧化に伴い大容量化の傾向を示している。定格電圧11~17(kV)で定格容量10~40(MVA)の範 囲のものが一般に用いられていたが、定格電圧275(kV)で定格容量200(MVA)のものが採用されている。

(4)静止型無効電力補償装置(SVC)
サイリスタによりコンデンサ又はリアクトルの並列回路を高速開閉することにより無効電力を調整する。

コンデンサ群またはコンデンサとリアクトルを組み合わせたものをサイリスタで高速開閉して無効電力を調整する装置が静止型無効電力補償装置であり、次のような種類がある。

第4図(添付)のように、コンデンサ群をサイリスタで開閉し、必要容量を得る方式をTSC(Thyristor Switched Capactor)と呼んでいる。この方式では、進み無効電力の段階制御となる。

第 5図(添付)のように、コンデンサに並列にリアクトルを接続し、リアクトルに流れる電流を位相制御する方法をTCR(Thyristor Controlled Reactor)と呼んでいる。連続制御が可能で、コンデンサとリアクトルの組合せで遅れ・進みの補償が可能となるが、リアクトルに流れる電流が歪むので 高調波を発生する。

最近では第6図(添付)のようにインバータの原理を用いたSVG(Static Var Generator)と呼ばれるものもある。この方式では遅れ・進み無効電力の連続制御が可能で、高い動作周波数のPWM制御を行うことにより低次高調波の低減をはかることができる。

また長いけど…、以上です。