ここの補足、です。
問題文、解答内容については、ここ参照で。
変圧器 問1
【解説】
(1)励磁電流
励磁電流は、鉄心内に主磁束を作るための無効分(励磁電流)と、それにより鉄心内に発生する鉄損を供給するための有効分(鉄損電流)からなる。鉄心の磁化特性は強い非直線性を示し、かつヒステリシス現象があるため、巻線に正弦波電圧を加えたときの励磁電流は、図1に示すように多くの奇数倍高調波を含んだひずみ波形となる。
高調波成分のうち第三調波は特に大きく、巻線がすべてY結線で構成されて、かつ中性点が接地されていない場合には、第三調波電流が励磁電流として供給されないため、各相の巻線誘導電圧に大きな高調波成分を含むようになる。また、中性点が直接接地されている場合には、この第三調波電流が送電線に流れて誘導障害を生じたり、送電線の静電容量と共振して異常電圧を発生する事がある。したがって、一般には、変圧器には少なくとも1個のΔ結線された巻線を設けておく必要がある。
(2)励磁突入電流
変圧器を電源に投入すると、鉄心内の磁束は投入前の鉄心残留磁束を初期値として、印加電圧の積分値に応じて変化することになる。(e=-dφ/dt)このため投入後しばらくの間、鉄心内磁束は定常状態と異なり、残留磁束と投入位相に応じてシフトされた状態で推移するため、飽和磁束密度を超える場合を生じ、過渡的に大きな電流が流入する。この電流を励磁突入電流と呼び、その波高値は定格負荷電流の5倍を超えることもある。
最も大きな突入電流が生じるのは、図2に示す変圧器が電圧零の瞬間に投入され、かつ残留磁束が印加電圧による磁束の変化方向と同一方向にあった場合である。この場合の鉄心内磁束は、定常状態の磁束最大値をφmとすると、投入後1/2サイクルの間に2φmだけ変化しなければならないので、残留磁束をφrとすると磁束絶対値は2φm+φrとなって鉄心の飽和磁束密度をはるかに超え、大きな励磁突入電流を生じることとなる。
磁束中に含まれる直流分は、巻線と回路の抵抗により減衰するので、突入電流も徐々に減衰して励磁電流の定常値に落ち着く。この継続時間は、大容量ほど長く、10秒あるいはそれ以上に及ぶことがある。
この突入電流が大きいと比率差動継電器が誤動作する事があるので、これを防止するために、変圧器投入後一定時間継電器をロックする方法や、突入電流が第二調波を多く含むことを利用して波形を弁別する第二調波抑制付比率差動継電器を用いる方法がとられる。
以上です。
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